往復書簡第1便「システマの親子クラスでは」

うさぴょんさま

 

ご質問、ありがとうございます。もしこの子が私のやっているシステマの親子クラスにやってきたら、という想定でお話をさせて頂きたいと思います。

 

前転が苦手とのことですが、システマの親子クラスでは前転の練習はしません。
その代わり、身体に様々な動きを経験させることと、身体を動かすことへの自信を養うようにしています。

 

特にシステマでは「自信」を重視します。それは「自信が挑戦を生み、成功することで更なる自信が得られ、さらに次のステップへと挑戦するようになる」という考え方があるためです。ここで言う「挑戦」とは決していちかばちかの大チャレンジではありません。確実に成功できる程度の小さな挑戦。それによって小さな成功体験をコツコツ蓄積することが、揺るがない自信へと繋がっていくのです。

 

ですからクラスに来たばかりの子供であれば、会場まで来たというだけでも一つの成功体験です。終わるまで教室の中にいられるのも、家でちょっとまねごとをしてみるのも、全て「小さな成功体験」としてカウントしていきます。こうして自信をつけていくなか、同世代の子が前転をしているのを見かけたら自分からマネしたくなるでしょう。ここまで来たら、前転をやるようになるまで時間の問題かと思います。

また現在は走り回るのが好きとのこと。転倒を恐れることなく、思い切り走らせておくのも必要なことかと思います。 親子クラスでは逃げ回る子供を大人がつかまえて抑え込み、子供がそこから脱出してまた逃げるという変形鬼ごっこをやりますが、子供たちはこれが大好きです。

 

 

ただ、子供によっては上下が逆さまになることに対して恐怖心を抱くことがあります。これは性格というよりも、それまであまり逆さまになった経験がないことが原因になっている場合が多いようです。もし心当たりがあれば上下反対に抱っこしてみたりなど、逆さまになる遊びを日常に取り入れるのも良いでしょう。

 

上下が反転しても冷静でいられるようになれば、前後上下左右という三次元空間をフルに活かした立体的な動きにつながっていきます。それは水中や空中など足が地面に着いていない状態での動きの制御に繋がってきますし、マーシャルアーツ(格闘技)的には、グラウンドワークと呼ばれる倒れた状態での技術にも大きく関わってきたりします。

 

ところで面白かった絵本とのことですが、タイトルと言うよりも私は作家さんで選ぶタイプなのです。なので作家さんを紹介することになりますが、やはり安野光雅さんは外せない感じですね。あと作家として大竹伸朗さんが好きなので「ジャリおじさん」も外せません。あとは荒井良二さんとかせなけいこさんとか。私の4歳になる娘は通っている幼稚園がプロテスタントでよく聖書について教わることから、聖書の絵本を愛読しています。あと義理の母が毎月、福音館ぶっくくらぶの絵本を送ってくれるので、これにはとても助けられてますね。それとブルーナのうさこちゃんシリーズはなかなか奥が深いですよね。意外に知られていないのですが、主人公を「うさこちゃん」と呼ぶ福音館版と「ミッフィー」と呼ぶ講談社版の二種類があるんです。両者はストーリーも絵柄も同じなんですが、訳が微妙に違います。「うさこちゃん」は少し引っ込み思案で夢見がちな女の子。対して「ミッフィー」は快活で社交的なキャラになってるのです。読み比べてみると訳のちょっとした違いでこうまでもキャラが変わるのかと、きっと驚かれることかと思います。私は昔ながらの福音館版の方が情緒があるような気がしてしっくり来るのですが、皆さんはどうなのでしょう。シリーズの中では特に「うさこちゃんとあかちゃん」と「うさこちゃんとおばあちゃん」は名作だと思います。うちの子は好んでこの二つを読むのですが、この二作から「生」と「死」を学んでいるようです。

ちなみに「うさこちゃん」と「ミッフィー」の本名は「ナインチェ」というのだとか。オランダから来たシステマのインストラクターに教えてもらいました。

おっとシステマより絵本について熱く語ってしまいました。

子供の運動と絵本について。山上さんはどうお考えでしょうか?