往復書簡第2便「整体的な観点から」

うさぴょんさま

 

こんにちは。山上です。さっそくのご質問をありがとうございます。

4歳のお子さんが前転が苦手ということですけれども、それに対するお返事はもう北川さんの方から出ているようですね。

北川さんのお返事を読むと、私も「うんうん、その通り」と頷いてしまって、私の方からはもう何も書くことが無くなってしまうのですが、さすがにそれだと往復書簡にならなくなってしまうので、ホントに蛇足になるかと思いますが、もう少し何か書いてみますね。

 

北川さんの方からはお返事として、「自信」というキーワードを出していただきました。

その北川さんからいただいた「自信」につながる整体的なキーワードを挙げさせていただくとすると、おそらく「空想」ということになるかと思います。

空想というのは、言ってみれば「ポカンと思い浮かぶこと」ですが、じつは私たちの意識にとってこれほど大きな影響を及ぼすものはありません。

私たちは怖いことを空想するだけで、心臓はドキドキし、血の気は引き、脚はがくがくして、脂汗がたらたら出てきたりしますが、それはみな空想の力なんですよね。

ただ「まっすぐ立つ」ということなんて誰でもできる簡単なことだと普通は思ってしまいますが、それが立つ場所が崖っぷちというだけで、たいていの人は膝も腰も筋肉が収縮してしまって、立ち上がることすらできなくなる。

それもやっぱり「落ちるかも…」ということを空想してしまって起こることで、空想の力なんですよね。空想というのはきわめて具体的な力なんです。

 

お子さんの様子を見てみないと確かなことは言えませんけれども、おそらくお子さんの「前転が苦手」ということの背景には、何らかの「怖い(痛い?)空想」が働いているのではないでしょうか?

だってもしそんな空想がまったく無いのなら、下手くそでもドタンバタンと前転(のようなもの)をしながら楽しんでいるでしょうからね。

ですからもし何かしてあげることがあるとしたら、お子さんの中に「前転を楽しんでいる空想」が浮かぶようにしてあげることだと思います。

それはきっと、北川さんの言う「自信」ということにそのままつながってくるはずです。

 

具体的にはたとえば、前でなく横に転がってみるとか、大人がコロコロ押して転がしてあげるとか、脚を持ってぶら下げてそのままゴロンと転げ落としてみるとか、そんなことをして「楽しく転がる空想」ができるようになると、あとは放っておいてもいつのまにか前転もできるようになっていることでしょう。

あと、もしいざ前転しようとするときに一つだけ技術的なアドバイスをするとしたら、「おへそを見ながら転がってごらん」ということですかね。

それ以上は本人の自由にやらせておけば良いと思います。

 

あとは、おもしろかった絵本と言うことですが、とりあえず真っ先に思いつくのが、スズキコージさんが挿絵を描いている「くつしたあみのおばあさん」(PHP研究所)ですかね。今年の初めに「AERA with BABY」という雑誌から、「子どもに読んで面白かった絵本はなんですか?」というまったく同じ質問の取材を受けたことがありまして、そのときにこの絵本をお答えしたんです。けれども残念ながら絶版ということで「他にありませんか?」と断られてしまいました。

私はスズキコージさんの絵の世界が何とも好きなので、それもお気に入りの理由の一つではありますが、物語自体もとても素敵で好きな絵本の一つです。

絶版ではありますが、もしどこかで見かけたならば読んでみていただけると嬉しいです。

(ちなみに結局その取材にはアーノルド・ローベルの「ふたりはともだち」(文化出版局)とお答えしました)

 

北川さんの方からは安野光雅さんが挙げられているようですが、私も安野さんは子どもの頃から好きでしたね。母が気に入っていたのですが、私も「旅の絵本」シリーズは大好きで、穴の空くほど見ていた記憶があります。

あれは「隠し絵」とか「重複絵」とか「連続絵」とか「物語絵」とか、いろんな隠し要素が混じっているので、それを探すのが大好きでした。

「○○絵」とか言っても何のことやら分からないかも知れませんが、読んでみると分かりますから、ぜひどうぞ。

 

あとは個人的には、最近出た「どこいったん」(クレヨンハウス)が何ともシュールで好きですね。絵本作家の長谷川義史さんがジョン・クラッセンという若手のアーティストの絵本を大阪弁で訳した本ですが、何とも言えない妙な「間の使い方」がじわじわきます。

まあでもこれはどちらかというと大人の楽しむ絵本かも…?

 

ところで今度は私から北川さんの方に質問させていただきますが、北川さんはマンガがお好きと朝カルの緑川さんから聞きましたが、最近のマンガで何かオススメのものとかありますか?

私も子どもの頃からマンガで育ったようなところがあって、今でもちょくちょく読んだりしてますけれども、最近読んでいるマンガでオススメに挙げるとしたら「へうげもの」とか「どうらく息子」とかですかね。ご存じですか?

あと古いものも挙げるとしたら「家栽の人」「オフィス北極星」「夏子の酒」「め組の大吾」…、何かまだいろいろ出てきそうなので、とりあえずこれくらいにして北川さんにパスいたします。

 

RYO